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  成形品の開発

成形品設計の課題
成形品設計の課題

開発製品や試作品から、実際に金型を製作する成形品を設計・図面化する際には、 いくつかの重要な検討項目があります。 これらは成形品設計から金型設計へ落とし込む際に、 一般的に検討される基本事項です。

成形品設計における主な検討項目

成形品設計時に特に注意すべき代表的な項目として、以下が挙げられます。

  1. 成形収縮率の設定
    高精度が要求される成形品では、寸法精度に直結する非常に重要な項目です。
  2. アンダーカットの有無および対策
    金型構造の複雑化、金型価格の上昇、生産性の低下につながるため、 可能な限り簡易な構造が望まれます。
  3. 抜きテーパの設定
    成形性、特に離形性や成形サイクルに大きな影響を与えます。
  4. 肉抜き設計
    成形品の外観品質(ひけ・変形)や成形サイクルに影響します。
  5. パーティングライン(PL)の位置・設定
    成形品の外観品質だけでなく、金型構造にも大きく影響します。
  6. 離形・突出し方法の検討
    成形サイクルおよび安定した離形性を左右する重要な要素です。

これらの項目は、成形品設計が適切に行われていれば特別に難しいものではありません。 しかし、上記項目のうち一つでも不適切な点があると、 成形過程で問題が発生し、量産成形全体に悪影響を及ぼす可能性があります。

「正解」が存在しない成形品設計

すべての項目に対して常に最適な設定値、いわゆる「正解」を得る方法は存在しません。 そのため、実際の現場では、これまでの経験・勘・度胸 (いわゆるKKD)に基づいて判断されることが多いのが実情です。

KKDによる判断自体が悪いわけではありませんが、 いずれかの項目が適切な値から外れている場合、 金型製作後や成形条件調整による追加対策が必要となり、 コスト増加や立ち上げ遅延につながります。

成形品設計に必要な知識と技術

成形品設計には、設計項目の理解だけでなく、 射出成形プロセスそのものを理解した技術知識が不可欠です。

成形品設計に求められる主な知識
  • 金型内における溶融樹脂の流動挙動(予測・理解)
  • 射出成形特有の不良発生要因と対策(ひけ、変形、ウェルドラインなど)
  • 金型作動の理解(射出、保圧、冷却、離形、取出し)
  • 成形収縮率の変動要因(形状・成形条件の違い)
  • 樹脂材料の種類による特性差(成形性、不良傾向)
切削加工との違いと射出成形のリスク

切削加工では、加工後に寸法や面粗さを確認し、 加工条件や工具を変更することが可能です。 一方、射出成形で調整できるのは主に成形条件のみです。 そのため、生産開始前にはテスト成形を行い、 良品が安定して得られることを確認したうえで量産を開始します。 しかし、生産開始直後に品質判断の漏れがあると、 連続生産された成形品がすべて廃棄となる可能性があります。 射出成形は生産性に優れる一方で、 わずかな設計・判断ミスが大きな損失につながる加工方法です。

成形品開発とコピー対策の重要性

新製品を初回から完成度の高い成形品として作り上げることは容易ではありません。 一方で、完成した成形品をもとにコピー成形品を製作することは比較的容易です。

完成品からは、ゲート位置、突出し構造、キャビティ構成、 樹脂流動状態などを詳細に観察できるため、 生産性や品質の高い構造を模倣することが可能となります。

コピー対策としての設計・開発の考え方

成形品開発においては、あらかじめコピー対策を考慮することが重要です。 特許や知的財産権による対策も有効ですが、 それだけで完全に防衛することは困難です。

  • 成形品単体ではなく、複合化した組立製品とする
  • 成形品そのものに機能的要素を組み込む

プラスチックレンズや導光板などの事例では、 成形品単体ではなく、光学設計やシステム全体の設計まで含めて対応することで、 差別化とコピー抑制を実現しました。 プラスチックレンズの場合、レンズ形状設計を外部(顧客)依存とすると、他社との差別化が困難になります。 そのため、光学設計から非球面レンズ面の設計までを自社で行うことで、差別化を図り、コピー対策としました。 また導光板については、単に導光板成形品を設計するだけでなく、液晶背面光源としてのバックライト全体の設計・開発まで一貫して対応しました。 導光板は外観形状こそ単純に見えるものの、平面光源としての面粗処理や光学特性の制御が極めて重要であり、高度な技術が求められます。 その結果、他社の容易な追随を抑制することができ、量産が進んだ後も、比較的長期間にわたり成形事業を継続することができました。

以下 参考資料
成形加工学会「光・機能部品セッション」の基調講演した資料を添付
題目「プラスチック光学素子の加工について
 高精度なレンズや導光板などのプラスチック光学成形品での光学設計や金型加工などに関して報告しました。
2018年4月号の「プラスチックス」に掲載された「射出成形による導光板の薄型・軽量化への取り組み」 の資料を添付

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